111話のあらすじ&感想記事です。
別マガ2018年12号掲載。単行本派の方はネタバレご容赦ください。
- ファルコがジークの脊髄液を飲んでしまう。
- サシャの件でガビたちにいざこざ発生。
~続く~

エレンと調査兵団の間に軋轢?
あらすじ
「100名あまりの兵士が姿を消した。その全てがエレンの脱獄と同時に離反を開始したとみられる。総統殺害もイェーガー派だろう。そしてその目的は分かるかハンジ」
「ジークとエレンの接触。兵団への粛清。総統の殺害は彼らの強い覚悟を示している。我々はジークを疑うだけで一歩も前に進まなかった。しかし、地ならしに頼るしかエルディアに生きる道はない。貴重な時間を浪費しているのは兵団のほうだ。そう思う兵士が多数出てきてもおかしくなかった。」
「イェーガー派の多くは調査兵団からだぞ。どう責任をとるつもりだ?ハンジ団長」
「私が兵団を退くことより無責任なことはない。それにイェーガー派はまだ兵団にどれほど潜んでいるかわからないだろ?」
「よさぬか。客人の前であるぞ」
アズマビトのキヨミはこの内部のいざこざに少し暗い顔を浮かべている。
「ハンジ、ジークの拘留場所を知るものは?」
「現地で監視にあたるリヴァイと30名の兵士。そして補給と連絡を受け持つ3名。あとは私だけです」
「ならばその3名をここに。ナイル、女王の住処は安全か?」
「限られたものしか知りませんが、今一度確認いたします」
「絵レンガ狙うはジークの拘留地を知るもの、ジークの代わりとなりえるヒストリア女王jを押さえることじゃろう。まずはこの二つの守りを万全のもとのせよ。そしてアルミン、巨人の力を持つお主も守りを固めねばなるまい」
「承知致しました。そして・・・総統を失った今、我々を統率することができるのはピクシス司令、あなただけです。何か今後の展望はございますか?」
「うん・・・エレンに降参しよう。わしらの負けじゃ。内部でどれだけの血が流れることか。そんな愚行に費やす時間はどこにもない・・・多くの兵に兵団を見放す決断をさせた。我々の敗因はこれにつきる。」
「総統らを殺した連中に頭を下げるおつもりですか!?」
「革命に生き、革命に敗れるのなら奴も本望じゃろう。何より4名の死者はエルディア国の崩壊は望むところではなかろう」
「それではイェーガー兄弟に服従するおつもりですか?」
「服従ではない。ジークの居場所を教えることを条件で交渉する。彼らとて先々を考えておるなら争ってる場合ではないとわかっておろう。我々は従来どおり、地ならしの実験を見守り、これにエルディアの存続をゆだねる。ただし我々の親玉を殺された件をここに不問とする。これで同志が殺しあわずに済むのなら安かろう。それでは各員とりかかれ」
「了解!!」
「司令殿」
横で聞いていたキヨミが立ち上がる。
「アズマビト殿。大変見苦しいものをお見せいたしましたのぉ。あなた方の安全も絶対とは言えませぬ。どうが事態の収拾まで港でお過ごしくだされ」
「そうさせていただきます。エルディア国の勝利を心より願っております」
キヨミはミカサの元に近づく。
「ミカサ様。何かありましたらすぐに私共の船までお逃げなさい」
「お心遣い感謝いたします。しかしながら私はエルディア人ですので、どうか私のことはお気になさらず」
「何をおっしゃいますか・・・私共がここに来たのはあなた様のために・・・」
「地下資源がなくてもですか?この国の主導権を握るのが誰であろうと地ならしさえ成功すればというお立場ですよね?」
キヨミは無理に作った笑顔とは裏腹に汗がだらだらと湧き出てくる。堪忍したのかキヨミも本音が出てくる。
「えぇ・・・地ならしの力が本物でなければ我々アズマビトはおしまいです。ヒィズル本国からは勝手にやったことにされ、梯子をはずされるでしょう。これまでの投資も無駄骨となり、抱えた負債によりマズマビト家も最期を迎えるでしょう」
「でしたらなお更頼るわけにはいきません」
「激動の時代の中でアズマビト家は変じてきましたが、今や銭勘定に浅ましい女狐の汚名が轟く始末と成り果てました・・・ただ・・・ミカサ様の母君が残された一族の誇りまで失ったわけではございません。この国がどうなろうとあなた様だけはお守りいたします」
「実際どうなんだよミカサ?お前は」
「私とアルミンは爆発に巻き込まれるところだったと言った。これでもわからないのコニー?」
「やめるんだ。ジークやイェレナは疑念が晴らされないことは予測済みだったんだ。この状況を踏まえた上で仕掛けられた保険が効果を発揮してきている。それはきっとフロックを懐柔したことのみに留まらない。万全を期すとするのなら、他にも保険があると考えるべきだ。私たちはこれ以上無様に翻弄される前に、ジークの思惑を明らかにするんだ」
「何かあてがあるんですか?」
「イェレナが守ったマーレ人捕虜が怪しい。例えばレストラン――」
「来たぞニコロ」
「あぁ・・・時間通りだ」
ブラウス厩舎の面々が立派な建物のエントランスにいる。
「すごい建物」
「よかったなお前たち」
「今日はうんと食っときないよ」
「どげんしたかミア。けそけそしてから」
「えっと・・・いや・・・」
「緊張しすぎだよミア」
「まったくどこの田舎から来たんだよ」
「ち、違う」
(カヤ?本当にこんなところでマーレの捕虜が働いてるの?)
(本当だから堂々としててよ。兵士もよく利用するところなの)
(マーレ人の知り合いができるだけでも心強いよ)
「ブラウスさん、ようこそいらしてくださいました・・・これはまた賑やかな人数ですね・・・」
「お招きいただきありがとうね。せっかくやから一緒に暮らす家族と来た。せっかくタダなんやから悪いね」
ニコロもこりゃ大変そうだという顔をしながら返答する。
「いえ・・・今日はお任せください・・・」
「あの人がブラウスさんを招いたマーレ人のニコロさん。あの人を頼ってみて」
「どうぞ案内します」
「ブラウスさんは兵士でもないのに何で招待されたの?」
「言ってなかったったけ?お姉ちゃんはブラウスさんの娘で兵士だったの。葬儀に来てくれたニコロさんがお姉ちゃんに食べてもらうはずだった料理を振舞わせてほしいって・・・私は二人は恋人同士だったと思ってるけどね」
「マーレ人とエルディア人が!?そんなのだめに決まってんでしょ!!」
「何で?」
(あれ?何か引っかかってた気がするけど・・・)
ゴージャスな料理に食が進む一同。味に感動を覚えている。
「まだまだメインはこんなもんじゃないぞ!!」
「ニコロ、お前に客だぞ」
「は!?こんなときに誰が!?」
「調査兵団だ」
ニコロはエントランスに行くと、そこにはハンジたちが待っていた。
「お前らか・・・どうしてこんな時間に?今俺は大事なお客さんの相手で忙しいんだが・・・」
「あぁ・・・もちろん仕事に戻って構わないよ。ただ後で話しでもさせてもらいたいだけなんだ」
「義勇兵が拘束された件だ。聞き取り調査に協力してくれ」
ハンジが遠慮気味に言うのに対して、オニャンコポンがはっきりと言う。
「ああわかった。とりあえずここで待っててくれ」
ニコロは彼らを別室に案内する。その部屋でジャンがワインを手に取る。
「ん?これは噂のワインか。何でも上官たちしか飲めねぇって話らしいけど。俺たちだっておいしい思いしたっていいだろちょっとぐらい」
ニコロは血相を変えて、ジャンが手に取ったワインを奪い取る。
「勝手に触るな!!」
「うぉ!?何だよちょっとふざけたぐらいで大袈裟だなぁ」
「これは・・・エルディア人にはもったいない代物なんだよ・・・」
「あ?ニコロお前まだ言ってんのか。何人だとかどうとか関係ねぇだろ酒に」
「触んなエルディア人。なれなれしいんだよ。ちょっと親しくしたぐらいで」
「そういう」てめぇは何様なんだよ・・・お前の立場は・・・
「捕虜の分際でってか?これでおあいこだなエルディア人」
「・・・」
ニコロは元の部屋に戻っていく。
「どうしたんだあいつ」
「わけわかんねぇよ」
(戻ってきた、今だ)
「うっ!!おなかが痛い!トイレに行けば助かるかもしれない!」
「私もおにいちゃんを助けられるかもしれない!」
「がんばって!」
ファルコとガビはニコロの元に来ると、早速話しかける。
「ここはトイレじゃないよ」
「トイレに用はありませんニコロさん」
「私たちはマーレから来ました。名誉マーレ人である戦士候補生です!」
「・・・は?」
「この島には世界中の軍隊から大攻勢が仕掛けられると思われます」
「それまでどうか耐えてください。そしてこのことを仲間のマーレ人に伝えてください」
「ちょっと待ってくれ・・・どうして戦士候補生がここにいるんだ?」
「1ヶ月ほど前にマーレのレベリオ区が悪魔共に奇襲を受けたんです。信じられないかもしれませんが・・・私たちは退却する敵の飛行船に飛び乗ったままこの島に上陸しました」
ニコロの表情が見る見る変わっていく。
「誰か・・・殺したか?女の兵士を・・・・」
ガビは嬉々と答える。
「はい!!仕留めました!!」
このとき、ファルコははっとした様子で何かに気づく。そして、彼女止めようとする。
「・・・ガビ、待て」
「ですがまだ数匹駆除した程度。私たちの故郷を蹂躙した報復はこれからです!私たちは卑怯な悪魔どもには負けません!」
「おいガビ!!」
「何よ?」
「お前が殺したのか・・・」
先ほどのワインをニコロは右手で掴む。
「え?」
「お前がサシャを殺したんだな!?
ニコロはワイン瓶を大きく振りかぶるとその瓶が大きく振りかざされる。
とっさにファルコがガビをかばうと、そのワイン瓶がファルコの頭に直撃。そのままうつぶせで倒れてしまう。
「あぁ・・・!?ファルコ!?」
「はっ!!」
少しニコロは正気を取り戻すも、構わずガビの顔面を殴りつける。
ニコロはブラウス厩舎の面々の下へと二人を連れて戻ってくる。
「は!?ニコロくん!?ベンとミアに何を・・・!?」
「サシャを殺したのはこいつです」
ニコロは座り呆けているガビに包丁を向けて、冷たく言う。
「あなた方の娘さんの命を奪いました。まだガキですが厳しく訓練されたマーレの兵士です。気をつけてください。人を殺す術に長けています。こいつがサシャを撃ったんです」
「娘・・・?」
サシャの両親は怒りとも苦悶とも絶望とも区別できない表情をガビに向けている。
「ブラウスさん、どうぞ」
包丁をサシャの父親に差し出す。
「あなた方が殺さないのなら、俺が殺しますが・・・構いませんね?」
その様子をドアの隙間からたまたま確認したアルミンがハンジらを呼ぶ。
「大変だ!来てくれみんな」
状況が飲み込めない調査兵団の面々。サシャを殺して逃亡している子供らに包丁を向けるニコロ。
「寄るな!!ただサシャの仇を討つだけだ!!」
気絶しているファルコの首に包丁をあてがう。
「やめてファルコは違う!!」
「このボウズはお前の何だ!?お前をかばってこうなったよな!?お前の大事な人か!?俺にも大事な人がいた!!確かにエルディア人だ!!悪魔の末裔だ!!だが彼女は誰よりも俺の料理をうまそうに食った・・・このくそみてぇな戦争から俺を救ってくれたんだ・・・人を喜ばせる料理を作るのが本当の俺なんだと教えてくれた・・・それがサシャ・ブラウス、お前に奪われた彼女の名前だ・・・」
「・・・わ、私だって大事な人たちを殺された!!そのサシャブラウスに撃ち殺された!!だから報復してやった!!先に殺したのはそっちだ!!」
「知るかよ・・・どっちが先とか」
「目を覚まして!!あなたはマーレの兵士でしょ!?あなたはきっとその悪魔の女に惑わされてる!!悪魔なんかに負けないで」
サシャの両親が何とも言えない表情を浮かべる。
「ニコロくん、包丁を渡しなさい」
「!!」
「さぁ」
ニコロは包丁の刃を持って、サシャの父へと渡す。彼は正面に立つと、ガビは涙を浮かべる。
「そこまでです。ブラウスさん。刃物を置いてください」
「サシャは狩人やった。こめぇ頃から弓を教えて森ん獣を射て殺して食ってきた。それが俺らの行き方やったからや。けど同じ生き方が続けられん時代が来ることはわかっとったからサシャを森から外に行かした・・・んで世界は繋がり、兵士んなったサシャは・・・よそん土地に攻め入り人を撃ち、人に撃たれた。結局森を出たつもりが世界は命ん奪い合いを続ける巨大な森ん中やったんや・・・」
サシャの父は妻に包丁を渡す。
「サシャが殺されたんは森をさまよったからやと思っとる。せめて子供たちはこの森から出してやらんといかん。そうやないとまた同じところをぐるぐる回るだけやろう・・・だから過去の罪や憎しみを背負うのは我々大人の責任や」
サシャの母は言う。
「ニコロさん、ベンを離しなさい」
ニコロは調査兵団に取り押さえられる。サシャの父はガビに優しく問う。
「ミア・・・大丈夫か?」
「本当に・・・私が憎くないの?」
瞬間、背後からカヤが包丁でガビを刺そうとするもミカサがそれを止める。
「よくもおねえちゃんを!!人殺し!!友達だと思ってたのに!!」
ガビたちは隣の部屋に連れていかれ、場は辛くも収まった。
「すっかりメインも冷めちまったな。ハンジさん・・・そのガキの口をゆすいでやってくれ。あのワインがはいっちまった」
「え?」
「もう手遅れだと思うけど・・・」
「あのワインには何が・・・入ってるの?」
「多分・・・ジークの脊髄液だ」
続く
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111話 分析【考察・解説】編
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