107話のあらすじ&感想記事です。
別マガ2018年8月号掲載。単行本派の方はネタバレご容赦ください。
- ヒストリア妊娠。
- 空白の4年間の回想多め。パラディとアズマビトは以前から友好関係にあった。
~続く~

あらすじ
牢の中にいるエレンにハンジは話しかける。
「何してるの?鏡に向かって話しかけてたの?ねぇ・・・?」
がん無視するエレン。
「鏡に映る自分に向かって話しかけてたんだよね?戦え戦えって・・・ね?戦え戦えって言ってたんだよね?戦え戦えって・・・二回。何と戦うの?戦え戦えって二回言ったってことは二回戦あるのかな?
沈黙がしばしの間流れる。
「黙ってちゃ分からないよ。普通そんな一人で喋ったりしないと思うからどういう状態なんだろうって。私は鏡の自分に話しかけたりしたことがないからさ」
「・・・」
「その髪型かっこいいと思うよ私は!!ちょっと乱れてる感じとか頑張って無造作に見えるような努力が伝わってくるし!」
「何しにきたんですか!?」
「何って・・・話にきたんだよ。はじめて会ったときなんて一晩中巨人について語り明かしたじゃないか。私の一方的な話を・・・君は聞いてくれた・・・私は確信してた。君がヒストリアを犠牲にすることはないって・・・二年前・・・港で行ったあの歓迎式の日――」
ジーク信奉者らとリヴァイやハンジ、エレン率いる調査兵団が対面している。
「君に船ごと担ぎ上げられて以来だ。これからよろしくね」
「いいや今後もお前らとの接触はない。顔を見せたのは最大限の譲歩だ」
「それで十分さ。今日はめでたい日になる。港が完成して初めて外国の要人を迎えるのだから――」
大きな船舶が港に留まり、そして要人がガードと共に降りてくる。
「パラディ島にとって唯一の友好国となるヒィズル国。その特使として来訪いただいたのはキヨミ・アズマビト。他国と歴史的に強い結びつきを持つために一国の外交に多大な影響力を持つ。彼女はその一族の頭首だ」
ミカサは彼女の顔を見て驚きを見せる。
「・・・!あのヒト・・・」
「お母さんと似た顔立ちかな?すべては話した通り。君の血縁者に当たる方だよ――」
「この家紋に見覚えはございませんか?」
服に記された刺繍の家紋を見せる。3本の刀がトライアングルを作っている紋章。
「これは・・・!!見せるんだミカサ」
「でもこれはお母さんが秘密にしろって!!」
「子供の頃は俺には見せただろ?その秘密はきっとこの日のためだ」
ミカサは右手首の包帯を解いて見せると、アズマビトのヒトは目を見開いた。手首に記された印は家紋と完全に一致していた。
「この印は死んだ母の一族が受け継いできたものです。私も自分の子に託すよう言われました」
アズマビトの人たちがまるで長らく帰ってこなかった子供が帰ってきたかのような優しくて悲しい表情を浮かべる。
「なんと・・・けなげなことでしょうか。およそ100年以上前ヒィズル国はエルディア帝国の同盟国でした。アズマビト家の祖にあたるわが国将軍家子息はフリッツ王家と懇意にしており、このパラディ島に逗留しておられたのです。そして巨人大戦後、ヒィズル国は敗戦国として立場を追われ・・・その混乱の最中、何があったのか定かではありませんが・・・将軍家の忘れ形見はこの島に取り残されたのです。そして、それから100年あまりが経ち・・・この島で唯一東洋の血を引くあなたとお会いすることが叶いました。あなたは・・・我々が失った一国の主の末裔、ヒィズル国の希望です――」
「アズマビトの話が本当ならミカサはヒィズルでは相当の権力を持つってことだよね?」
「私に聞かれましても・・・」
「国の一番偉い血筋の生き残りなんだろ?」
「そもそも国ってのがまだよくわからんな」
「とにかくヒィズルが利用できるようなら何でもするんだ!」
「待て!これが罠だったら?」
「やはりイェレナの意見を聞くしか・・・」
「それこそ思う壺だろ!」
「ひとつ確かなことがある。我々は世界において赤ん坊にすぎんということじゃ。今は黙って耳を貸すのみとしよう。これ以上客人を待たして恥を重ねてはならんぞ」
無邪気にヒストリアがミカサにちょっかいをかける。
「ねぇその印。なんでエレンだけには見せたの?」
「え・・・これはその」
「だって手首の包帯、誰にも見せなかったじゃない」
「何か嬉しそうだな」
「嬉しいんだよ。私たちは生まれのことで重い荷物を背負うもの同士なんでしょ?ミカサが一緒ならこんなに頼もしいヒトいないよ」
エレンは微笑む。
「私どもはあなたの元気なお姿が見れただけでもありがたい思いでいっぱいです。ただ今後のことにおきましてはこれだけお見知りおきください。アズマビトはいつでもあなたをお待ちしています。」
「・・・はい」
「本日は両国にとって歴史的な日です。この日を迎えられたのは私たちを引き合わせてくれた人物の存在が不可欠でした。私どもはパラディ島に残された末裔の情報を聞き入れ、情報の提供者であるジーク・イェーガーと密会しました。そこでミカサ様への仲介を条件にある取り計らいを承りましたことを報告させていただきます」
「私の母はフリッツ王家の生き残りでした。つまり私にもその血が流れています。この事実はマーレに隠したまま戦士長の座を務めてまいりました」
「マーレに忠実なあなたがなぜそのようなことを?」
「私こそが物心つく頃より父の思いを受け継いだ真のエルディア復権派だからです」
「・・・しかしあなたは」
「えぇ・・・父を母をマーレに売りました。当時七つだった私はマーレ当局の捜査が父の率いる復権派の足元にまで及んでいることをいち早く知りました。このままでは両親と同志はもちろん、祖父母と私自身の楽園送りは確実でした。そこで私のとった行動は前述したとおりです。両親は正しかった。しかし甘かった。誉れ高きエルディアの復国はあの遊びグループで満足している連中では到底なしえないのです。私は両親を見限りマーレ軍で地位を手にした後も救うべきパラディ島を蹂躙しエルディア人を殺し続けました。マーレ軍による始祖奪還計画を成功させることがエルディア復権の手立てでしたから。なぜならマーレは私が王家の血を引くものであることを知らない。王家の血を引く巨人と始祖が接触すれば何が起きるのか、マーレは何も知らないわけです。あなたの祖国も・・・今はまだ」
「あなたの目論見どおり私共は将軍家末裔を求めています。しかしながらエルディアの復活が世界に危機を及ぼすのであれば、それを見過ごすわけにはいきません。場合によってはこの密会をマーレに白状すべきでしょう。まことに残念ながら私共が全員この場で死んでも結果は同じです」
「もちろん承知していますよキヨミ様。アズマビトだけでなくヒィズル国にとって利益が生じなければ成立しえない話です。まずはこちらをご覧ください」
「・・・それは」
「あれ?マーレの機密案件でしたが・・・ご存知でしたか。この立体機動装置はパラディ島で開発された巨人を殺す兵器です。これはマーレ軍が管理しているものを持ち出したわけではございません。私が個人的に調達したものですのでご安心を。こちらを差し上げます。しかしこの兵器を動かすためにはある特殊な燃料が必要になります。それを彼らは氷爆石と呼んでいました。未だパラディ島以外では採掘されたことのない未知の地下資源ですが、はるか昔からこの存在は囁かれていました。古代より巨人の王はパラディ島に穴を掘り、そこに巨人の力で生み出した萌える石や光る石などの財宝を蓄えていると。わずかながらもその兵器の中にも氷爆石の痕跡が残っているでしょう。パラディ島の人々にはその地下資源の真価を知るよしもないでしょうが、あなたの国はそれが分かる。この情報はヒィズルとパラディ島を結びつけるはずです――」
「彼をこの島に送還する計画に協力するなら一度傾いた国家が大国に返り咲くほどの産業を手にするでしょうと・・・そう提案してきたのです。まだ埋蔵量も調査したわけではございませんのにねぇ」
よだれをたらすキヨミ様。
「ですが・・・もしそれが事実ならこの近代化の時代において金銀財宝にほかならぬ資源が眠っておられるのです。いえいえこれと私共の財閥が事業の拡大に乗り出したこととは全く無関係ですので」
ボディガードがハンカチを差し出す。
「キヨミ様お使い下さい」
「あらまぁ・・・お目汚し失礼致しました」
(アズマビトは金の臭いにするどいから交渉はうまくいくってイェレナが言ってたな)
(私はだしに使われただけでは?)
(やはり儲け話もなしにこの島に来る危険は冒せんというわけじゃな)
ヒストリアが言を発する。
「それでジーク・イェーガーとの取り計らいとは一体なんでしょうか?」
「ご存知の通り、彼は秘策があると主張しています。エルディア人と世界を救う秘策にはヒィズルの介入が不可欠とのことです。それは地ならしでこの島を守るために必要な三つの過程の一つです。まず一つ目は地ならしの実験的活用。その力の一部を公開し、世界に地ならしの破壊力を見せ付けるのです。二つ目がヒィズルの介入です。地ならしが必要なくなるまでこの島の軍事力を世界の水準まで底上げすることが目的となります。最新兵器を導入することはそれほど困難なことではありません。しかし近代的な軍隊を設立するためには強固な国力の土台を築く必要があります。教育や経済力に外交力・・・そして人口。この島と世界には約100年の隔たりがあります。その遅れを埋めるのに100年かかるわけではありませんが50年は必要になるでしょう」
「!」
「つまり50年は地ならしが島を守るため機能しなければならないのです。始祖の巨人の保有者と「王家の血を引く巨人」その保有者、両者の継続的な維持」
ヒストリアのいつにもない真剣な表情を浮かべる。
「これが三つ目の過程。ジークは獣の巨人を王家の血を引くものへと継承。王家の血を引くものは13年の任期を終えるまで可能な限り子を増やすこと」
みなが目を見開く。ハンジだけはそれを最初から分かっていたかのように目を伏せる。
(50年で終わるだろうか・・・いくら他の兵器が発達しても地ならしは強力な兵器だ・・・それを手放すことができなければ継承者一族は暗殺の危険にさらされ続け、何世代にもわたり継承は繰り返されていく・・・レイス家のように親から子へと・・・何度も何度も・・・今私たちが助かるためなら・・・こんな解決不能の問題を未来の子供たちに残していいのか?いいわけがない。こんなことが許されるはずはない・・・しかし)
「わかりました」
ヒストリアは決断する。
「私は獣の巨人の継承を受け入れます。地ならしが我々の存続に不可欠である以上は」
「・・・ヒストリア」
ミカサもなんと声をかければいいか分からず、名前だけを呼ぶ。
エレンは席を勢い欲立つ。
「壁を破壊し、蹂躙された挙句、家畜みてぇに子供を生まされ殺されてやっと生きることが許されるって言うのなら・・・俺はジーク・イェーガーの計画は到底受け入れられません。地ならしの維持に我々の命運をゆだねるのは危険です。残された時間の限り、あらゆる選択を模索するのが我々の取るべき最善策ではないでしょうか?」
ヒストリアは震えながら涙を浮かべ、自分の本音を言ってくれたような感動の表情を見せている。
「えぇ・・・まだ結論を急ぐときではないでしょう。我々も引き続きジーク・イェーガーとの仲介に協力いたします――」
そして時は今に戻る。
「別のやり方はまだ見つかってなかった・・・確かにジークの任期は迫っていたし予想よりも早くマーレはパラディ島進行計画を進めてきた。君と焦燥感を共にしたつもりだった。でも君がなぜ単独行動に出てこの島を危機に追い込んだのかが分からない。もうヒストリアはどうなってもよかったのかい?」
「俺は戦槌の巨人を食いました。この巨人の能力は地面から自在に硬質化を操り、武器でも何でも生み出すわけです。厄介な相手でした。つまりどれだけ深く硬い地下に俺を幽閉しても無駄だってことです。俺はいつでも好きなときにここを出られる。当然始祖を持つ俺を殺すこともできない。いくら脅したところでジークを殺すわけにもいかない。つまりハンジさん、あなたに何ができるって言うんですか?」
エレンは牢屋の柵越しにハンジの胸倉を掴む。
「うっ!?」
「教えてくださいよハンジさん。他のやり方があったら!!教えてくださいよ!!」
エレンの顔に巨人痕が浮かぶ。ハンジはエレンの手をはたく。
「エレンのエッチ!!いまだに反抗期かよバカ!!・・・若者!!」
牢のある地下室から出て行くとドアにもたれた。
「エルヴィン、あんたの唯一の失策だ・・・なんで私なんか団長にしたんだよ――」
ミカサは墓にもたれかかっている。すると近くから怒号が響いてくる。
「おいお前マーレ人だろ!?ここに何しにきやがった!?マーレに殺されたエルディア人の埋葬に何の用だ!?」
ジャンとコニーが怒っている兵士の間に立って仲裁する。
「待ってください。こいつは俺たちで何とかしますんで!ニコロ大丈夫か?」
「お前どうやってここに来たんだ?」
「くそっなんでだよ。本当に・・・サシャは死んだのか?なぁ?何で・・・お前ら何やってたんだよ・・・飛行船に乗り込んできた少女に撃たれたって・・・?は・・・そんなバカな話があるかよ」
「ただの女の子じゃない。訓練されていた」
ミカサが答える。
「・・・戦士候補生か」
「俺の油断があった・・・すまない」
「・・・なんで俺に謝る?俺はただ飯を用意してただけだ」
コニーがニコロの肩に手を置く。
「あいつにうまいもんいっぱい食わしてくれてありがとうなニコロ」
「・・・お前はどうなんだよコニー」
「・・・俺とサシャは双子みてぇなもんだった。自分が半分なくなっちまったみてぇだ・・・」
墓の前に喪服の家族が訪れて、ジャンとミカサは振り返る。
「あなたは・・・」
「娘が世話になったようやね――」
家族が墓の前で向かう姿を見届けるニコロら。
「あ・・・あの私は捕虜のマーレ人ですが、料理人として就労許可を持っています。娘さんは俺の料理を・・・誰よりもうまそうに食べてくれました。だから・・・もしよかったら・・・俺の料理を食べにきてください!」
サシャ父とニコロは握手する。
「もちろん無料なんやろ?」
「あ・・・はい・・・」
「マーレから奪ってきた巨人化の薬はこれですべてです。しかし複製は困難でしょう。必要な機材も巨人専門家も今回は奪えずじまいでしたから」
ピクシスらがイェレナが率いる巨人信奉者らを拳銃を向けて取り囲む。
「いやこれだけあれば十分であろう。本当になんと感謝を申し上げればよいことか・・・諸君らには借りしかない。無知な我々を希望へと導いてくれた。諸君ら有志を疑うことは悪魔の所業に等しくあろう」
「この三年間エルディア人の友人であることを証明してきたつもりでしたが・・・残念です。私たちが持ち込んだこの銃はエルディア人に自由をもたらす銃なのに」
「虫のいい話ですまぬが、我々の弱さにしばしの間だけ目を瞑ってくれぬか?ジークに枷をかけぬわけにはいかんのだ」
「かまいませんよピクシス司令。すぐにまた我々と食卓を囲む日が来ますから」
「その日が来ることを願っておるのは・・・わしらのほうであろうぞ――」
「俺のホテル・・・これぇ?」
ジークが馬荷台に運ばれてきたのは巨大樹の森の前。
「何か不満でもあるのか?これ以上お前にふさわしい宿はねぇよ。樹高80メートルの群生林からなる巨大樹の森だ。一人じゃ簡単にでられねぇし手頃な岩もねぇ。何かをぶん投げることも満足にはいかねぇだろう」
「立体機動でたくさん遊べそうだしな。しかし・・・これも世界中でここだけにしかないものだぞ。なぁ?リヴァイ兵長。ガビとファルコにもこの雄大な自然を見せてやりたいんだがどうだ?」
「・・・ガキが気になるようだな。ガキが雄大な自然を拝めるかどうかはお前次第だ――」
「ガビ!?おい!?どうしたんだ!?おい!?しっかりしろ!!」
牢の中、ガビが苦しんで必死にファルコが介抱する様子が見える。それを見た兵士が慌てて心配の声をかける。
「何があった!?おい嬢ちゃん大丈夫か?」
兵士は鍵を開けて牢に入り込んでガビの元へ駆けつける。
「き、急に苦しみだして!!」
ガビは兵士が近づいたところをレンガ入りのシャツを顔面にぶつける。倒れた後もすかさず何度も殴りつける。
死体(?)をベッドの下に隠し、二人は脱走する。
「ここから逃げてどうするってんだよ!?」
「あのままだと殺されるでしょ!?」
「・・・あの人はお前を心配してたぞ・・・」
「悪魔を信じてどうするの?もうジークも信じられない!!もう・・・誰も・・・!!」
二人は草むらをかぎ分けてどこかへと向かう――。
ライナーは大量の汗と共に目覚める。すぐそばにはポルコとピークも佇んでいる。
「悪い夢でも見たか?すべて夢ならよかったのにな」
「・・・ガビとファルコの声が聞こえた。二人は・・・どこだ――?」
ある女性は家の庇の下で、夕日を眺めてぼんやり座っている。
「中に入ろうヒストリア。もっと体をいたわらないと」
とある男がまるで別人のような雰囲気を醸し出すヒストリアに声をかける。彼女のおなかは妊娠していた。
続く
考察・感想編は別記事として出してます。解説や感想、予想などにご興味がある方、更なる分析をご希望の方はぜひそちらもお越しください。
こちら:
107話 分析【考察・解説】編
進撃の巨人の関連情報は随時紹介します。乞うご期待!