96話のあらすじ&感想記事です。
別マガ2017年9月号掲載。単行本派の方はネタバレご容赦ください。
- ライナーの回想の続き
- 主に845年のウォールマリアを襲った日の回想と真相の話となる
- 前回同様に回想メインなのでストーリー的には進展なし
~続く~

いわゆるどういう顛末だったのか、どういう真相があったのかという回想です。見ていて、1巻あたりを思い出す懐かしい話とその裏側という感じです。
あらすじ
マルセルを襲った巨人から逃げ出したライナーは息を切らして、汗だくになりながら木の下でへたり込む。振り返っても仲間たちの姿が見えない。
「あ・・・ベル・・・トルト・・・アニ・・・マルセル・・・(食われた・・・巨人に・・・俺をかばって・・・俺のせいで・・・みんな食われたのか!?覚えてない。頭が真っ白に。どうすれば。ここにいたらダメだ・・・俺も食われる・・・今日ここで死ぬんだ)」
地面に頭をつけていたライナーが背負うバッグを何者かが蹴り飛ばす。
「わぁああああああああああ」っ!!あ・・・!?
「・・・やるじゃん。長距離・・・走であんたに負けたの・・・初めてだよ」
息絶え絶えのアニとその後ろに膝をつくベルトルト。
「すぐに・・・マルセルを食った犯人を・・・おさえておけば、顎の巨人を失わずにすんだのに・・・あんたたちが逃げて・・・私も・・・わけがわからなくなって・・・クソ野朗・・・もうマルセルは・・・帰らない」
アニは悔しそうな表情を浮かべる。
「だって・・・あんなところで巨人に会うなんて・・・壁に近づかないと・・・巨人はいないって・・・」
「絶対じゃない。全ての巨人が・・・仕掛けどおりに行動するわけじゃないって・・・教わったじゃないか・・・」
「・・・もういい帰ろう・・・」
「え?」
「顎を捜して帰る。どこかで人の姿に戻ってるはずだ・・・どの道マルセルの指揮がなきゃ始祖奪還計画なんて果たせっこない。すでに作戦は・・・失敗してる。ここだって・・・いつ巨人が現れてもおかしくないんだから」
アニとベルトルトが帰りの方向へ歩きだす。その後ろ姿を見てライナーは思い出す。母の姿を。言葉を。
(お前なら必ず任務を果たせるよ。きっとお父さんもお前の成功を祈ってくれているから)
「・・・待て」
ライナーの呼びかけにアニとベルトルトが振り返る。
「ダメだ・・・帰れない。作戦を続行する」
「確かに・・・あんたはこのままじゃ帰れない。このままマーレに帰ればあんたはこの失態で鎧を剥奪され、次の戦士に食われる・・・私の知ったことじゃないけど」
「俺だけだと言い切れるか?」
「・・・は?」
「3人とも逃げた責任を俺だけが問われるのか?自分たちだけは粛清されないと確信を持って言えるか?それに顎の回収も得策じゃない。そいつに顎の巨人を使って逃げられたりしたらどうするんだ?あの走力じゃ車力の巨人でもない限り俺らの巨人じゃ捕まえられっこないだろ!?」
ベルトルトは不安そうに否定する。
「・・・そんなすぐに巨人の力が使えるもんか!」
「お前はすぐに超大型を使いこなしただろうが!!とにかく・・・!!下手に顎を追ってここで巨人の力を使い果たせば巨人に食われちまうし、このままマーレの停泊船に失態だけ持って帰っても!!俺たちはおしまいなんだよ!!」
二人は言い返せないでいた。
「俺たちが・・・再び故郷に帰るためには・・・何か・・・成果を・・・始祖を獲得しなきゃ・・・もう帰れないんだよ・・・」
「何で・・・その冷静さの百分の1でも発揮してくれれば・・・さっきは顎も・・・マルセルも失わずにすんだのに。自分の身を守るためなら私たちを脅すってわけ?」
「・・・わからないんだ・・・俺は――」
アニがライナーの顔面を蹴り上げる。
「アニ!?」
「あんたがマガトに弁解しな!!全て『自分の責任です』って言え!!何が名誉マーレ人だ!!選ばれし戦士だ!!マーレもエルディアも全部くそったれだ!!全員うそっつきで!!自分のことしか考えてないくせに!!私もそうだ!!生きて帰んなきゃいけないんだよ!!」
仰向けに倒れているライナーをガンガンと蹴り続け、激昂するアニ。
「お前さっき死ぬはずだったんだろ!?悪いと思ってんなら死ねよ!!罪をかぶって死ね!!」
気がすんだのか、アニはその場を離れる。彼女が目を離した隙に血だらけのライナーは起き上がり、すかさずアニに飛びついて、ヘッドロックをかける。
「・・・ライナーは死んだ・・・マルセルが必要なら・・・俺がマルセルに・・・なるから・・・これが・・・俺たちが故郷に帰る・・・唯一の手段だ・・・」
「・・・もうやめてくれ・・・ライナー・・・もう・・・わかったから・・・」
ベルトルトは涙を浮かべる。
「帰ろう・・・みんなで・・・故郷に――」
女型の巨人に乗るライナーとベルトルト。彼女は叫びで巨人を集めながら、壁のほうへと走っていた。
「ライナー・・・もうアニの体力が・・・」
「わかってる!!(クソ・・・もう追いつかれる。まだ壁は先なのか?作戦じゃ顎と交代で行くはずだった道のりを女型一人で進んでる。もうアニはとっくに限界だ・・・かといって鎧を消耗しても作戦は成功しない)」
「見えた!!壁だ!!」
「アニ!!交代だ!!」
(予定より巨人が多い・・・急がないと・・・ベルトルト、頼んだぞ――)
ベルトルトは見上げる。
「これが壁・・・ウォールマリア・・・大きい・・・こんなのを破壊するなんて・・・僕にできるのか?」
(ウォール・マリアを破壊し巨人侵入の混乱に乗じて住民に紛れ込む。そして壁の王フリッツの出方を見て、始祖への手探りを探る。すべては・・・壁を破壊できなきゃ始まらない・・・頼んだぞベルトルト)
まばゆい光と同時に現れた超大型巨人、壁越しにウォールマリアの町シガンシナを一望する。道にはたくさんの住民が見える。特に子供三人の姿が目に入る。後に対峙するエレン、アルミン、ミカサの三人が。
しかし、構わず壁門を足で破壊する。そして、超大型巨人を解除する。
その様子を後方で伺っていた鎧の巨人とアニに、集まってきた無数の巨人がまとわりつく。ベルトルトに巨人が集まらないようにするための陽動であったが、ベルトルトのほうに一体の巨人が向かう。後にカルラの命を奪い、ジークの母でもあり、グリシャの前妻でもあるあの巨人が。
ベルトルトは超大型巨人のうなじから抜け出している最中であり、隙だらけの状態だった。巨人の表情に凍りつくベルトルト。襲うのには絶好の機会。しかし、ベルトルトを無視してシガンシナの門へとくぐった。
鎧の巨人はベルトルトを掴むと、ウォールマリアの壁を上り始め、無数にいる巨人を振り切った。
(俺は戦士になりたかった・・・母の願いを叶え、父と三人で幸せに暮らせると思ったから。でも・・・そんなことを望む父はどこにもいなかった。母はかなわないと分かっている夢を・・・見続けていた。俺は選ばれるはずのない戦士で今日死ぬはずだった・・・)
(・・・ライナーすまない)
マルセルの悲しそうな表情が浮かぶ。
(何で謝った・・・なんで俺なんかを助けた・・・いやだ――まだ終わりたくない。まだ何もわかってないんだ)
――そして、アニはとある避難所の床で目覚める。周りには巨人たちから避難してきた住民が溢れかえっている。アニの隣にはベルトルトとライナーが座っている。
「ここは?」
「ウォール・ローゼの中だ・・・アニ・・・ベルトルト・・・ごめんなマルセル」
ライナーは二人をそっと抱き寄せる。
「俺・・・本当の戦士になるから」
ほんの数メートル先に同じように集まる子供達が3人いる。エレン、ミカサ、アルミンがほんのすぐそこに。
「――俺の村は・・・ウォールマリア南東の山奥にあった。川沿いの栄えた町とは違って・・・壁が壊されてもすぐには連絡が来なかった。なにせ連絡より先に巨人が来たからな。明け方だった。やけに家畜が騒がしくて・・・耳慣れない地響きが次第に大きくなって、それが足音だと気づいて急いで窓を開けたら――」
見知らぬ男性がライナーたちに語る。
「その後は・・・覚えてない。馬に乗って逃げたんだ・・・ちょうどお前らぐらいの子供を3人残してな」
後日、彼は首を吊って亡くなっていた。野次馬たちが無責任に語る。
「彼は・・・あの村の唯一の生き残りじゃなかったか?」
「あの村って?」
「地図にも載ってないあの小さな集落だろ?」
「どこでもいい。早く降ろしてやるぞ」
「・・・そうか。やはりあのフリッツ王は影武者だったか」
「あのじいさんだけじゃなくて家ごと別物だった。何の権限もない木偶人形だけど」
「恐らくユミルの民じゃない。百年前フリッツに媚びた他人種系エルディア人が壁の中央を仕切ってる。始祖の巨人の力が及ばないからか・・・秘密と忠誠を守る見返りに権限を与えている」
「じゃあその家に取り入ればいいんだ。本物の壁の王に通じてるはずだ」
「・・・どうやって?使用人として雇ってもらうとか?それとも私がその家の男に擦り寄って嫁入りするとか?」
「そんなのダメだよ!!」
「そう。これは無理。奴らはユミルの民じゃないから権力の中枢にいられるのに、家系に穢れた血を感染させるようなヘマはしないよ。壁が破壊されてからは侵入者を警戒して新たな使用人は雇ってない。・・・そもそも私に男をたぶらかせるような魅力はないし」
「そんなことないよ!!」
「・・・?それはどうも」
「そうなると付け入る隙はあそこしかないな」
「兵士になって中央憲兵に接近するんだ」
「・・・私に言われたくないだろうけど、ここまで調べるのにもう2年かかってる」
「その間、俺らは木を引っこ抜いた。王都を行き来できるのは女型だけだからな」
「私たちに残された時間は残り10年・・・その10年を兵士ごっこに費やせって言うの?」
「・・・壁を破壊して2年経つが・・・壁の王は動かなかった。タイバー家の情報が正しかったのなら壁の王は不戦の契りとやらに縛られている」
「・・・だったら、ちんたらしてないでさっさとけりをつければいい」
「あぁ・・・ウォール・ローゼもウォール・シーナも全て破壊するってことだろ?」
「・・・!!」
「そうすりゃさすがに始祖の巨人が姿を見せるかもしれんがいくら牙を抜かれたって言われても一度始祖が叫べば、全てがひっくり返るんだぞ?そうなりゃ俺たちは尊い戦士の任期を全うすることなく、世界と共に死ぬ・・・人類の運命は俺たちの手にかかっているんだ。だったら・・・時間がかかったって進むしかねぇだろ。俺にも・・・ようやくわかってきた・・・それが俺たちがここにいる意味なんだってな!」
「問おう!!貴様らは何しにここに来た!?」
ライナーは強く答える。
「人類を救うためです」
続く
考察・感想編は別記事として出してます。解説や感想、予想などにご興味がある方、更なる分析をご希望の方はぜひそちらもお越しください。
こちら:
96話 分析【考察・解説】編
進撃の巨人の関連情報は随時紹介します。乞うご期待!