94話のあらすじ&感想記事です。
別マガ2017年7月号掲載。単行本派の方はネタバレご容赦ください。
記事の更新が遅れました。遅くなり大変申し訳有りません。遅れた分を出来るだけ取り返していきます。
- 大きな進展は特になし
- 戦争に出たエルディア人マーレ兵が故郷に帰還。
- より明確になりつつある在マーレ・エルディア人のパラディ島への歴史認識。
- ライナーの子供の頃の訓練の様子・回想が描かれる
~続く~

今回も骨休み回というのでしょうか。マーレ側の事情の掘り下げに徹した回という雰囲気です。いまだにパラディ側が見えてこないのですが、完全にこのまま視点をチェンジする方向性になるのか気になる部分の一つでもあります。
あらすじ
電車から降りる戦士一行たち。ガビは声を上げる。
「生きて帰ってきたぞぉ!我らのいとしき故郷!!レベリオ!!」
(・・・ブラウン副長。四年前はパラディ作戦失敗の責任を引き受けて鎧を剥奪される寸前だったけど、命を賭した戦果の数々でマーレへの忠誠を示し、いまや剥奪の声は聞こえなくなった・・・そうだ・・・昔から他の戦士よりも高い忠誠心をマーレに示してきた。それがライナー・ブラウン戦士隊副長だ。でも昨夜の副長は何だ?俺がガビを救えって・・・?他の人に聞かれでもしてたら危険な話を俺に・・・)
(・・・もしブラウンさんが俺と同じ考えでエルディア人を戦争から解放したいんだとしたら・・・)
ファルコは思案を巡らせる。
「何をたくらんでる?」
「いっ!?」
ガビが悩むファルコに疑惑の目を向ける。
「さっきからちらちらこっちを盗み見て鬱陶しい。なんなの?反逆の予兆として隊に報告しとくから」
「は!?お前!!誰のせいだと――」
「ガビお前のせいだ」
ライナーも悪乗りする。
「罪な女になったなぁガビ」
「はぁ!?私のどこに罪があるっての!?なんなのさもう!!」
ファルコはライナーを見る。
(信じて・・・いいのか?)
雑兵含めた戦士一行は塀とフェンスに囲まれた地、そこの厳重な警備に囲まれたゲートをくぐって、故郷の地に舞い戻る。
各々が家族に迎えられる。戦地から帰ってきて家族との感動の対面を済ませる。それは戦士長ですら例外ではない。
「じいちゃんばあちゃん、ただいま」
「ジーク・・・立派に勤めを果たしたな・・・」
「・・・いいや、まだだよ」
一方、ガビも。
「父さん!!母さん!!」
「ガビ・・・聞いたぞ。エルディアのために立派に戦ったんだってな」
「うん。ちょっと危なかったんだけどね・・・」
「だがその勇気が多くの同胞の命を救ったんだ」
「あなたは自慢の娘よ・・・あなたはきっと誰よりも立派な戦士になるわ」
ライナーは暗い表情でガビたちのやりとりを眺める。
「ライナー」
「母さん」
「疲れたでしょう。帰ってゆっくりなさい・・・」
「そうさせてもらうよ・・・」
「カリナおばさん!!」
「ガビ・・・今日は家でお祝いだよ」
「やったぁー!!」
大半はお祝いのムードが流れる中、建物の陰では負傷したエルディア戦士兵たちの行列が歩かされている。彼らの姿はぼろぼろだ。行列を束ねるコスロという男にファルコは話しかける
「コスロさん、負傷兵ですか?」
「心的外傷を負っちまったエルディア人だ。それも身寄りがねぇ連中だとよ。ここの病院で治療することになる」
「こっちの国でも!?」
「長いこと前線で塹壕掘らせてたらこうなっちまうらしい。弾とか爆弾が降ってくるからな。ヒュウウウウドカーン!!って」
コスロは大声で脅かすと兵士たちが頭を抱えてしゃがむ。
「大丈夫ですか?落ち着いてください・・・あなたは腕章が逆だ。大丈夫です。きっとよくなりますよ。もうあなたは戦わなくていいんですから・・・」
その夜、ライナー一家とガビ一家で食を囲む。
「そこでばたっと倒れたの!トーチカの敵は案の定女の子の私を撃つのをためらってくれたんだけど、それでも私はいつ撃ち殺されてもおかしくない状況だった。そんな中で装甲列車が来るのを待った。そしてここしかないってタイミングで爆弾をぶん投げたら・・・どっかーん!!狙った通り!!装甲列車は脱線してひっくり返った!!私の作戦大成功!!でも敵は逃げ去る私に機関銃を撃ってきた!!穴ぼこめがけて必死に走ったよ!!私は鉛弾を食らう寸前のところで――・・・ガリアードさんが私を守ってくれて助かったの」
武勇伝を延々と語るガビ。それを黙って聞くライナー。
「すごいわガビ!!お前はエルディアの救世主だ!!」
「ライナー、ガビは戦士になれそうなのかい?」
「・・・あぁ・・・今回の戦果を踏まえてもガビが鎧の巨人の継承権を得るのは決定的だと思う」
「それはよかった・・・一族から二人も戦士を授かるなんて。お前たちがマーレに認めてもらえたことを誇りに思うよ。あとは・・・あの島に住む悪魔どもさえ消えてくれれば・・・みんな幸せになれるのにね」
「・・・大丈夫だよカリナおばさん。私達戦士隊が島の悪魔からエルディア人を守るから。心配しないで」
「ありがとうガビ」
「戦争には勝ったが依然として・・・いつ島の奴らが世界を滅ぼしに来るかわからない状態のままだ」
「あぁ・・・こんな状態じゃ世界中の人々がエルディア人を恐れるのも無理はない」
「なぁライナー。お前でさえ島の悪魔から逃げるのがやっとだったんだろ?世界一の軍事力であるマーレの鎧でさえ・・・」
「・・・」
「だめだよみんな・・・そんなこと聞いちゃ。島の内情はマーレ軍でも上の人しか知ることができない機密情報だって言ってるでしょ?それにライナーだって辛いんだから。凶悪で残虐な悪魔たちの住む島に5年も潜入してたんだよ?そこでどんな辛い目にあったか・・・機密情報じゃなくたって言えないんだよ」
「そうだな・・・わが甥よ。悪かった」「お前の立場も考えずに・・・」
「・・・いいや。話せることもある。俺はあの島で軍隊に潜入してたんだ。まさに地獄だった。島の連中はまさしく悪魔で残虐非道な奴らだったよ。あれは軍の入隊式の最中だった・・・突然芋を食いだした奴がいた。教官が咎めると悪びれる様子もなく答えた。うまそうだから盗んだと。そんな悪党だが、さすがにまずいと思ったのかその芋を半分譲ると言って教官を買収しようとしたんだ。しかし・・・その差し出した芋でさえ半分には到底満たない僅かなものでしかなかった。奴らに譲り合う精神など無いからな。本当に・・・どうしようもない奴らだった」
「便所に入るなりどっちを出しに来たか忘れたと言う馬鹿だったり、自分の事しか考えてねぇ不真面目な奴、人のことばっかり考えてるクソ真面目な奴、復讐しか頭にねぇ奴に何があってもついて行く奴ら・・・それに・・・色んな奴らがいてそこに俺たちもいた。そこにいた日々はまさに地獄だった」
食卓が静まり返る。
「・・・少し話しすぎた。この話は忘れてくれ」
「色んな奴らって何・・・?悪い奴らでしょ?」
ガビが疑問を呈する。それに同調したカリナおばさんは答える。
「そうだよガビ・・・島にいるのは悪魔だ。世界を地獄にして屍の山に自分たちの楽園を築いた悪魔だ。でも私達は違う。私達大陸のエルディア人は生涯を捧げてマーレに及ぼした凄惨な歴史を償う善良なエルディア人なんだから。島の奴らはいつ強大な巨人で世界を踏み潰し進撃してくるか分からない。それを阻止するのは私達エルディア人でなくてはならない。それが果たされて初めて私達は世界から良い人だと認めてもらえるんだから」
「私達を置き去りにして島に逃げた奴らに・・・制裁を与えなくてはならない。私達を見捨てた奴らに・・・」
ガビは強く頷く。
夜、床につくライナーは昔のことを思い出していた。
「私達は見捨てられたんだ・・・だから収容所に住んでいるんだよ」
昔、ライナーが子供の頃、カリナに語られた言葉が蘇る。
「私達には過去に悪いことをした。悪魔の血が流れているからね。檻の中に入ってないとみんなの迷惑になるんだ。お前にお父さんがいないのもそのせいだ。お父さんはマーレ人だからね。マーレ人はエルディア人と子供を作ることを固く禁じられているから・・・だから・・・このことは秘密だよ?」
「うん・・・」
「私達が悪魔の血を引くエルディア人だから・・・あの人と一緒にはいられないんだよ。マーレ人に生まれていれば・・・」
(そうだ・・・あの頃俺は母とマーレ人になるために戦士を目指したんだ)
訓練中のことを思い出す。
「誰が歩けと言った!!走れ!!うす汚い豚の末裔共!!名誉マーレ人にはなりたくないらしいな!?」
子供の頃のライナーが訓練をしているが、他の兵士に比べて遅れをとっていた。
「マルセル・ガリアード合格!!」
仲間の合格を見てライナーは悔しそうな表情を浮かべる。
「ベルトルト・フーバー合格だ!!」
「くっ・・・」
「アニ・レオンハート。申し分ない!!合格だ!!」
「くそっ・・・」
様々な訓練で仲間たちが合格していく一方、取り残されていくライナー。しかし執念は認められて。
「母さん!!戦士候補生に選ばれたよ!!」
「ライナー!!よくやったわ!これで・・・名誉マーレ人まであと一歩ね・・・」
「うん・・・僕が必ず九つの巨人を継承してみせるよ」
「お前ら知ってるか?あと数年でパラディに攻撃するってさ。俺たちが巨人を継承するときが来たんだよ。もうじき南との戦争にめどがつく。そして俺らの戦士にも任期が迫って来ている。そこで軍の新体制の中で戦士隊は再編成されるらしい。俺たち7人の戦士候補生から一挙に6人だ」
とコルト(?)。
「やったぁ・・・これでマーレ人になれる」
ライナーは喜びに打ち震える。
「は?何が『やった』だ。お前はこの中のどべだろうが・・・一人余るんならお前だろ」
ガリアードが鋭い指摘を入れる。
「・・・なんだと」
「お前の長所はなんだよ。体力か?頭脳か?射撃か?格闘術か?どれも違うよな?お前が評価されたのは試験で募ったマーレへの忠誠心だろ?それに関しちゃ尊敬するぜ。毎日毎日隊長へのこびへつらいをかかさねぇ。島の悪魔どもは僕が必ず皆殺しにしてみせますってな」
「島の奴らは世界を恐怖に貶める悪魔だろうが!!奴らを殺さなきゃまたいつか殺戮を繰り返すんだぞ!?お前は俺たちの任務をバカにするのか!?それともお前はフリッツ王を支持するエルディア復権派の残党か!?そうだろ!!間違いない!!俺が隊長に報告してやる!!」
「てめぇ・・・!ふざけんな!!」
ポルコ(現ガリアード)はライナーを殴り飛ばす。
「ポルコやめろ!!」
ベリックが仲裁に入る。
「島の恨み節くらい誰だって言えんだよ!!てめぇは一人で留守番して13年待つんだな!!」
「くっそぉ・・・」
「ライナー・・・すまない・・・」
「泣き止んだらすぐに来いよー遅いと俺がマガト隊長にどやされんだからさ」
ベリックはともかく、コルトらは特にライナーに同情的でもない様子。
「・・・立ってよライナー」
ベルトルトが地べたに張り付いてるライナーに手を差し伸べる。その手を掴んでライナーは立ち上がる。
「13年も・・・待ってられない」
「え?」
「俺は・・・マーレ人になって母さんと父さんと三人で暮らしたいんだ」
「どういうこと?」
「それは言えないけど・・・」
「・・・まだ13年待つって決まってないよ。継承権を与えるのはポルコじゃない。マーレ軍が決めるんだから」
「でも・・・あいつの言うとおり俺はドベだし・・・」
「そうかなぁ?忠誠心は大事だと思うけど。ねぇ?君もそう思わない?アニ」
「え?・・・何?聞いてなかった」
アニは足を引きながらこちらを振り返る。その足下をよく見ると踏みつけたイナゴの死体。二人は狂気を見た気がした。
「さぁ行こう」
アニが走り出すとそれに追従する二人。
「でもいいの?そんな目標があるのに・・・13年しかないんだよ?」
「13年で英雄になるんだろ?世界を脅かすパラディ島の悪魔を成敗すればエルディア人を・・・いや世界をすくえるんだ。そしたら俺は世界一の自慢の息子になれるのに・・・」
同時刻(?)、同じ空を眺めるエレン。
「はぁ・・・何か起きねぇかなぁ・・・」
「エレン、ここにいたんだ」
続く
考察・感想編は別記事として出してます。解説や感想、予想などにご興味がある方、更なる分析をご希望の方はぜひそちらもお越しください。
こちら:
94話 分析【考察・解説】編
進撃の巨人の関連情報は随時紹介します。乞うご期待!