89話の考察・解説編、感想パートです。本編を読んだ方や「89話ネタバレ記事」を読んだ方向けの記事となります。まだ本編をお読みでない方はネタバレに注意してください。
※89話・・・2017/1/7発売の別マガ2月号掲載
先にこちらの記事を読むことを推奨します。
気になった部分の感想や解説、捕捉などをしていきます。最新話考察はここで浅く広くご紹介しています。単独で別記事で出す場合も。

調査兵団は僅か9名に。
新団長のハンジ・ゾエをはじめ、リヴァイ、エレン、ジャン、アルミン、ミカサ、サシャ、コニー、フロックのみとなりました。
今後新しく兵員を増やすかは不明。既に「壁内人類vs巨人」の戦いでは無くなっているため、調査兵団自体の存在意義が変わってくるのではないかと思われます。
調査兵団の目的は「ウォールマリアの奪還」をはじめ、「巨人内領域の探求」や「未知への研究」、付随的に「巨人の討伐」でしたがこれらはほぼ達成。組織的には別の方針になる可能性があります。

ユミルはストリートチルドレンで拾った人が「ユミル」と名付けたようです。
ユミルという名前は北欧神話由来であり、名前だけでもキーパーソンと分かる人物扱いでした。公式でもユミルという名前がEDクレジットでは「そばかす」になっていて伏せられてたくらいです。(進撃巨人中学校などでは名前解禁されてましたが)
というのも神話では巨人の始祖的な存在だからです。
この男がなぜ彼女を選び、ユミルを選んだのかまでは分かりません。何か理由がある可能性ももちろん考えられますが、現状は偶然選ばれたという印象が強いです。
そして彼女はその名前を名乗るだけでちやほやます。まるで宗教のように。そうやって彼女はユミルを演じ続けました。しかし、あるときマーレ局(?)の検閲にあいます。ユミルを拾った男はユミルに責任転嫁し、自分だけ難を逃れようともしましたが、それでも彼女はユミルを演じ続けます。石を投げられ、パラデイ島に追放。そして彼女も巨人化させられてしまったのでした。
あるときベリック/マルセルを捕食し人に戻ります。目を覚ましたときの夜空はまるで自由を象徴しているようでした。それから彼女は何者からも縛られない生き方をしていって現在に至ったそうです。
彼女は「これから死ぬ」と手紙に記しておりますが、具体的な描写は手紙の内容のみで実際に死んだのかは不明。生きてる可能性も視野に入れてはいますが生存は絶望的だと思われます。

さりげなく特別編「イルゼ・ラングナーの手帳」の伏線が回収されてました。
「ユミルの民・・・ユミルさま・・・よくぞ」
皆様覚えてますでしょうか、この台詞。すっかり忘れていた!という人も多いのではないでしょうか。ユミルがパラデイ島へ追放、壁から落とされて巨人化させられたときが以下になるのですが・・・
左に例の巨人が写ってます(笑)。どうやらユミルを崇めてたものの一人だったそうで、巨人が喋ったのは古い記憶が呼び起こされたからなのかと推測できます。なおイルゼとユミルは顔の特徴が似ており、巨人がユミルと勘違いしたのだろうというのが定説になっていることを補足。
この喋った巨人がユミルを拾った男と同一人物の可能性があります。しかし確たる証拠がないので今のところ不明。
こっちも見ると分かりやすいよ!

「不戦の契り」
新しく出てきた言葉ですが、意味的には「王は戦う気ありません。戦うくらいなら壁内人類と一緒に滅びます」という145代目継承王の思想的呪いです。これにより王の力は制限されてるに等しく、始祖の巨人の力は発揮できません。
この作品の一つのテーマとしては「何故145代目がこの思想に至ったのか」が焦点となります。これは本作の重要な根幹であり、有名な説「ループ」などにも関わってくる可能性すらありえるんじゃないかと思ってます。

緊急時にエレンの「始祖の巨人の力」が発動した理由もエレンの考察によって判明しました。単純に危機的状況に陥ったせいかと思われてましたがそうではなかったようです。
ダイナ・フリッツに「ペチン」と素手で殴り、王家の血を引く者と接触したことによって一時的に力を行使できたようです。さらにエレンは明らかに以前よりも賢くなっており思考を巡らせます。彼の行き着いた結論は王家の血を引くものを巨人化させ、それを食べたら力を行使できるかもしれないというもの。
しかし、ヒストリアの身を案じて周囲には話しませんでした。
ここはかなり面白い設定でこの伏線は全く気がつきませんでした。諫山先生に一本取られた気分です。極限状態に陥って発動したように思えたのですが、まさか王家の血を引くものと接触したからだったとは・・・。ダイナが例の巨人だったときに気づいた人いるのかなぁ・・・。すっかり盲点になってました。
ところでエレンの推測はかなり極端で、「ヒストリアをエレンの巨人体の肩や頭の上に乗せるだけでも力を行使できそうな気がする」と感じたのは自分だけでしょうか。「もしくはエレンとヒストリアがその姿のまま手を繋ぐだけでも行使できそう」と最初は思ったのですがどうでしょうか。
いずれにせよ、「ヒストリアを食べる」と始祖の力を行使できたとしても、145代目の呪いを受ける可能性も否定できないような気もしますし、その辺りがどういう調整がされているのかが気になるところです。

「巨人になる前の記憶はもうなくなるんだろう?」
「そうとは限らん。後で誰かが見てるかもしれん」
ここの会話は一瞬「あれ?」となった箇所です。巨人になる前の記憶が無くなった描写はこれまで掲示されてません。ただ、巨人になる直前の半日~一日(?)くらい記憶を失うので、そのことを指してるのでしょう。「巨人化直前にこんな話してもどうせ忘れてるよ」というニュアンスの会話ですね。
そして諫山先生特有の言い回しで面白い台詞、「後で誰かが見てるかもしれん」というクルーガーの台詞は面白いです。そういえば「誰か」が見ることが出来るのならグリシャ自身も“見る”ことが可能なような気も。エレンも初巨人化直前の記憶は何だかんだで取り戻すことに成功してましたし(頭痛などを引き起こすなど、かなり条件がきつかった様子ですが・・・)。
このように巨人化直前の失った記憶もきつい条件はあるものの取り返せるのではないかと思われます。

クルーガーに壁の中に入ったら所帯を持ったり、人を愛するように言われます。
クルーガーの意味深な台詞です。明らかに重要となる伏線であることは誰の目でも分かるような台詞。なぜ過去の人物であるエレン・クルーガーがミカサとアルミンを知っていたのか、誰に向けてへのメッセージなのか。所々疑問が浮かぶのですが、考えが整理できないので深く追求するのは今回は避けておきます(笑)。本来は一記事に出来るくらいに考察が書けそうな内容なのですが・・・。
この「人を愛するルート」を選ぶことが出来なかったのが145代目の王なのでしょうか。

通常種・奇行種と呼ばれる巨人に「無垢の巨人」という新たな定義名が出てきました。

無いとは思うのですが、ループっぽい表現が出てきたのでさらっとメモ帳かわりに書きます。
88話のサブタイは「進撃の巨人」でした。この88話になぜ「進撃の巨人」という重要なサブタイを名付けたのかを考えていました。そこで88話の「8」にメタ的に焦点を絞ります。「8」には横にすると「∞」すなわち「無限大」という意味があります。「ウロボロス」が由来ともなっており、死と再生の意味などを持っています。また、北欧神話ではヨルムンガンドがそれに近い存在です。
ウロボロスには、1匹が輪になって自分で自分を食むタイプと、2匹が輪になって相食むタイプがある。2匹のタイプの場合、1匹は何も無い素のままの姿だが(王冠を被っているタイプもあり)、もう1匹は1つの王冠と1対の翼と1対の肢がある。
ヘビは、脱皮して大きく成長するさまや、長期の飢餓状態にも耐える強い生命力などから、「死と再生」「不老不死」などの象徴とされる。そのヘビがみずからの尾を食べることで、始まりも終わりも無い完全なものとしての象徴的意味が備わった。 古代後期のアレクサンドリアなどヘレニズム文化圏では、世界創造が全であり一であるといった思想や、完全性、世界の霊などを表した。 錬金術では、相反するもの(陰陽など)の統一を象徴するものとして用いられた。 カール・グスタフ・ユングは、人間精神(プシケ)の元型を象徴するものとした。
他にも、循環性(悪循環・永劫回帰)、永続性(永遠・円運動・死と再生・破壊と創造)、始原性(宇宙の根源)、無限性(不老不死)、完全性(全知全能)など、意味するものは広く、多くの文化・宗教において用いられてきた。
「だから何?」という話なのですが、何かそういう関連した思惑を感じ取れなくも有りません。
総評・次回の予想
今回も重大なネタが発覚した回だったように思えます。
意味深な台詞が多く、今後の展開の含みを持たせるというような話が多かったですね。最終話終わった後に見返すと「あーなるほど」となるように話を作っているように感じさせられました。
ということでいつもの次回予想。
しばらくはエレンの始祖の力をどうやって開花させるのか、という話に入るのではないでしょうか。
ということで――それではまた次回にお会いしましょう。さようなら。