87話のあらすじ&感想記事です。
別マガ2016年12月号掲載。単行本派の方はネタバレご容赦ください。
- 前回から引き続き、グリシャの過去回。
- エレンとグリシャの記憶(意識)が融合しつつある
- 発覚!フクロウの正体、カルラを襲った巨人の正体!
~続く~

またまたグリシャ回!やはり面白い。今回のは前回の予想の答え合わせが早く出来たので楽しかったです。グリシャ、ダイナ、クルーガー、カルラ、エレンとめぐる輪廻の輪は見所。今後はいったいどういう風に展開の舵取りを行うのかも気になるところです。
あらすじ
「いいかジーク。お前はエルディア人を導く王になるべくして生まれたんだぞ?マーレは全て間違っている。だがお前はマーレに従順に従わなければならない」
「エルディアの屈辱はあなたが晴らすのよ?」
(私は知っていたはずだ。親が子を自らの思想に染め上げる罪深さを。なぜあのときの自分と重ねることができなくなったのか。ジークはわが子を危険に晒す親を見限り、自らと祖父祖母の安全を選んだ。おろかな両親をマーレに差し出すことと引き換えに――)
拷問室。グリシャは拷問を受けていた。
「答えろ!!フクロウは誰だ!?」
「だから俺たちは誰も知らないんだ!!」
グリシャの指が1本ずつ切り落とされていく。グリシャは知らないと悲鳴を上げてやめてくれと懇願する。
「どうだ。何か分かったか?」
一人のマーレ官の男が入ってくる。身なりや口調から拷問官の上司にあたるのだろう。
「フクロウがまだです。全く恐ろしい奴です。我々当局の内部にいながらエルディア復権派を組織していたなんて。さらにはマーレの戦士にスパイを忍ばせて、パラディ島の“始祖の巨人”を奪い、マーレの巨人兵力を無力化する計画まで立てていたとは・・・」
「同時に“始祖の巨人”の力を引き合いに東のマーレ敵対国に支援と亡命を呼びかけるところまで進めていたようです。密告がなければ危ないところでしたよ」
「船の時間だ。楽園に行くぞ――」
(見たことのある顔だった。私は蒸気船の中で必死に記憶を辿った)
目隠しを外される。
「着いたぞ」
グリシャは30メートルほどの高さの壁の上にいた。背中には広大な海と船着場。前方は砂漠。横には10メートル置きにエルディアの仲間たちがずらっと並び膝をつけさせられている。その背後には一人ずつマーレ兵が付いている。
「ここが・・・」
「そうだ。ここがエルディア人反逆者の流刑地、パラディ島楽園との境界線だlお前たちはここで終身刑となる。知性のない巨人となってな。人を感知し、人を追跡し、人を食らう。ただそれだけを死ぬまで繰り返す。だが・・・問題は死ぬ術がほとんどないということだ。」
「俺は・・・あんたと会ったことがある・・・子供の頃に・・・」
「・・・覚えていたか・・・」
「あの日のことを・・・忘れるものか・・・」
男は常に無表情だったが、何とも言えない表情をわずかに浮かべる。
背後に仲間の一人が通り過ぎる。所定の位置につかされようとしているのだろう。グリシャの隣の位置に座らせられる。
「頼む・・・殺してくれ・・・いやだ巨人はいやだ・・・」
「グライス・・・」
「グリシャか!?おい!?どうなってる。何でジークが俺たちを密告するんだ!?おい何とか言えよ・・・」
「・・・」
「お前の息子だろ!?どういうしつけをしたら親を売るがきに育つんだ!?お前に問題があったんじゃないのか!?お前は調子がいいだけの役立たずだったな!!お前に全てを託したのが間違いだったんだ!!復権派も!!ダイナも!!何とか言えよ!!」
「・・・すまない・・・」
「・・・なんでこんな奴に・・・エルディアは終わりだ」
ぽっちゃり目のマーレ官が歩いてくる。
「活きのいいのがいるな。お前は自由だ」
グライスが30メートルほどの壁の上から蹴り落とされる。下は砂砂漠になっているためか、衝撃は緩和されて死んではいない。
「グライス!!」
「北にまっすぐ走れ!!運がよかったら壁までたどり着けるぞ!!」
「グロス曹長?」
「ん?お前はここは初めてか?巨人は海に近づかないようなってはいるが、こうしておくとこれから生み出す巨人があいつに引かれていなくなる。このほうが作業がやりやすい。まぁすぐに喰われるがな。そうだろクルーガー」
(こいつ・・・間違いない・・・妹を殺した当局の男・・・)
「さぁ今回は数が多いぞ!!どんどんやっていこう!!」
グロスは手を叩く。仲間たちの背後に立つ兵士らが注射器を取り出し、瓶から液体を吸引していく。それを仲間たちの脊髄に注入し、即座に壁の下へと落とす。地面に落ちたものたちはすぐに巨人へと変身した。
「みんな・・・」
巨人たちの嗅覚がはるか前方に走っていったグライスを察知すると、それらはすごい勢いでグライスのもとへと向かっていった。
「みんなやめろおおグライスだ!!分からないのか!?」
「おいクルーガー。早くそいつも巨人にしろ。うるさくてかなわんぞ」
「いや・・・こいつにはまだ尋問したいことがある。先に進めてくれ」
「はいはい仕事熱心も程ほどにな。おっ次は女か。もったいねぇ悪魔の血じゃなきゃなぁ・・・」
一人の女性が目隠しをされて連れてこられる(はっきりと確認できないが恐らくグリシャ同様に指を切り落とされてると思われる)。恐る恐るグリシャは彼女に視線を向ける。
「・・・ダイナ」
「あなた・・・」
「なぜここに?伝わってないのか?俺は・・・洗いざらい全部話したぞ!!お前らマーレにとっても彼女は重要なはずだ!!彼女は王家の血を」
「あ?」
「黙れ」
グロスに聞こえたがすかさずクルーガーがグリシャを殴り伏せて口を塞がれる。
「んんんん!?(なぜだ!?俺はこいつの部下に言ったぞ!?・・・まさか・・・こいつが揉み消したのか!?)
「どうした?」
「聞くに堪えん戯言だ。作業を進めてくれ」
「ったく・・・さっさと巨人にして黙らせろよ」
注射針がダイナの背中に刺される。
「グリシャ・・・私は・・・どんな姿になっても・・・あなたを探し出すから」
「ははっそりゃいい。巨人同士でよろしくやってろ」
グロスはダイナを蹴り落とす。激しい光と共にそれは巨人となった。カルラやハンネスを食べた巨人の姿に。
「ああああああああああああああああ」
牢屋でエレンは涙を流しながらベッドの上で激しく目覚める。
「は!?」
アルミンとミカサもその大声で目覚める。
「ここは?私は・・・なぜ」
「エレン落ち着いて。ここは懲罰房でエレンとミカサは兵器違反のお勤め中だよ」
「どうしたのエレン?怖い夢でも見たの?」
「・・・あぁそうだよな」
「・・・今さ・・・“私は”って言った?自分のことを?」
「え?」
「・・・え?」
「・・・言ってた。泣いてるのエレン?」
「・・・なんかすっげー長い夢を見ていた気がするんだけど・・・いや夢じゃねぇ・・・記憶だ・・・あの本に書いていたことはやっぱり本当だったんだ・・・今・・・オヤジの記憶と繋がった・・・あの巨人・・・お前だったんだな・・・ダイナ・・・」
「――見ろ。お前には目もくれずグライス君を追ってるぞ。本当はあっちの男に気があったようだなハハハハハ」
「黙れ」
「何か言ったか?」
「お前だろ十五年前・・・俺の妹を犬に食わせたのは・・・八歳の妹を犬に食わせたのは!!お前だろ!!」
「チッそいつで最後か?」
またエルディアの同胞が連れてこられる。
「はい」
「よし。俺にそいつをよこせ」
「お前らは全員先に船に戻ってろ」
「了解です」
「どういうことですか?」
「ここからは曹長の趣味の時間だ新入り。まああまり触れてやるな」
「しかしエルディア人はいえ八歳の娘にまで手が及んでいたとはな・・・・・・」
ぞろぞろとマーレ兵士たちは船着場のほうへと階段を下りて離れていく。壁の上へと残ったのはグリシャとグロス曹長、クルーガーと最後のエルディア同胞。
「クルーガー。尋問はもう済んだろ?今回はそいつに踊ってもらうぞ」
「思い出したよ少年。お前は巨人しないでやる。彼に食べてもらうことにした。3~4メートルぐらいの巨人に調整するからこいつと戦ってくれ。それもできるだけ長く抵抗してくれると助かる」
「・・・あんたは何でこんなことするんだ?」
タバコの煙を吹かしながら言う。
「・・・なんで?なんでってそりゃ・・・面白いからだろ?人が化け物に喰われるのが。そりゃあそんなもん見たくねぇ奴もいるだろうが。人は残酷なのが見たいんだよ。ほら?エルディアの支配から解放されて何十年も平和だろ?大変結構なことだが何か物足りんのだろうな。生の実感ってやつか?それがどうも希薄になってしまったようだ。自分が死ぬのは今日かもしれんと日々感じて生きてる人がどれだけいるが知らんが、本来それが生き物の正常な思考なのだよ。平和な社会が当たり前にあると思っている連中のほうが異常なのさ。俺は違うがな。人はみないつか死ぬが、俺はその日が来てもその現実を受け入れる心構えがある。なぜならこうやって残酷な世界の真実と向き合い、理解を深めているからだ。当然楽しみながら学ぶ事も大事になる。あぁ妹を息子たちの犬に食わせたのも教育だ。おかげで息子たちは立派に育ったよ」
「・・・心は痛まないのか?」
「・・・まぁ言いたい事はわかる。もし息子が同じ目にあったらと思うと胸が締め付けられる。その子が何か悪いことをしたわけでもなかったのにな・・・」
「あぁ・・・妹は飛行船が見たかっただけなんだ。あれに乗ってどこか遠くに行く夢を見たかったんだ」
「・・・かわいそうに。エルディア人でさえなければな・・・・・・」
「は?」
「あれをよく見ろ」
最後のエルディア同胞が巨人となった姿でこちらを見上げている。その巨人は前田敦子似の巨人でミーナやサシャを襲った巨人。アニにトドメをさせられた奴だ。
「あれがお前らの正体なんだぞ?」
「は?」
「巨人の脊髄液を体内に吸収しただけで巨大な化け物になる。これが俺らと同じ人間だとでも言うつもりか?こんな生き物はお前らエルディア帝国の“ユミルの民”以外に存在しない。こんな人の皮を被っただけの怪物が大量に繁殖しちまったのはまさしく悪夢だよ。まあ今でこそ平和だがそいつらの支配から解放されたと思っていてもたまにお前らのようなネズミが沸くからな。分かるか?エルディア人をこの世から一匹残らず駆逐する。これは全人類の願いなんだよ」
「・・・なんだと?」
「家に済みついたネズミを放置すれば伝染病を招く恐れがある。ならば当然ネズミは駆除しなければならない。心は痛まないのかって?痛むわけないだろ?人を殺してるみたいに言うなよ。人殺しはそっちだろ?お前ら復権派は俺たちマーレに何をしようとした?エルディア帝国と同じ道を辿ろうとしたよな?心は痛まなかったのか?」
「・・・嘘だ。お前らの歴史は全部嘘だ。俺は真実を知っている。我々の始祖ユミルは・・・巨人の力で荒地を耕し道を造り、峠には橋をかけた。大陸の人々を豊かにしたんだ。マーレは歴史を歪曲している」
「・・・あぁわかったよ。偉大な歴史があったんだろ?下に居る友達と語り合うといい」
グロスはグリシャを押し出そうとする。
「やめろ!!」
「バカいうな!お前が食われるのが見たいんだ!!陳腐な喰われ方だけはやめろよ!?まだ見たことのないパターンを見せてくれ」
「くそ野郎!!ふざけるな」
「そう怒るなって。こういう娯楽も必要だって話はしたろ!?もっと前向きに考えろよ!ほら!?妹が呼んでるぞ!?」
「くそおおおおおおお」
グリシャがもうダメだと思った瞬間、クルーガーがグロスを押し出す。グロスは砂にかけ落ちて転がると、前田敦子似の巨人がいつものダッチューノのポーズでグロスを覗き込む。次の瞬間悲鳴がグリシャたちに届いた。
「どうだ?これが面白いと思うか?」
「あんたは・・・」
「俺がフクロウだ」
クルーガーはびしっと制帽を投げる。船着場にいる兵士たちもそれに気づく。
「何だ――!?グロス曹長が落ちたぞ!?」
「覚えておけよグリシャ」
クルーガーはナイフを取り出し、自分の左手に向ける。
「巨人の力はこうやって使う」
――エレンの巨人とよく似た姿の巨人が船を引きちぎる。
続く
考察・感想編は別記事として出してます。解説や感想、予想などにご興味がある方、更なる分析をご希望の方はぜひそちらもお越しください。
こちら: 87話 分析【考察・解説】編
明確にどちらが強いかという問いに対する答えは避けてる感じです。実際どちらが強いのでしょうか。
進撃の巨人の関連情報は随時紹介します。乞うご期待!