シリウス9月号、『進撃の巨人 Before the fall』第10話のあらすじ&感想記事です。また、リヴァイ外伝の番外編ネタもあるのでご留意ください。
※今月号はスピンオフ作品の番外編なども掲載されております。
あらすじ
「一体、いつになったら調査兵団は帰ってくるんだ!?」
シガンシナで英雄たちを見送った町民は痺れを切らしていた。帰ってくる予定の昼はとっくに過ぎていたからだ。そんな中、開門の合図のリバティ・ベルの音が鳴り響く。
門が開き、町民は一瞬賑わうもそれはすぐにざわめきに変わる。壊滅状態の調査兵団の隊員たちが次々と逃げ帰ってくる。キュクロの姿は未だ見えなかった。砲撃の音も飛び交う。その様相を見守っていたシャルルは不安に駆られる。
最後の帰還者の姿が見える。カルロ・ピケール隊長・・・そして、キュクロだった―――――。
「目的は達したか?巨人を見ることで何か得るものはあったか?」
「・・・あった・・・」
キュクロの巨人を一目見るという目的は果たされた。しかし、兵団に捕まるわけにはいかない。それは死線を共に越えたカルロ相手でも同じだ。群集に紛れて逃げるつもりだったが、カルロに気を取られて逃げるタイミングを失う。さらに追い討ちをかけるが如く、キュクロとカルロの二人を憲兵団の兵士が取り囲む。その中の一人、きつそうな女性兵士がカルロの前に立ちはだかる。
「シガンシナ区担当憲兵団隊長グロリア・ベルンハルトだ。後ろの少年の引渡しを要求する」
「目をつけられることをしたのか?」
「何もしてない!」
「その少年の名はキュクロ。またの名を巨人の子。大罪人だ」
「俺じゃない!俺は何もしていない!」
カルロはその名前を聞いて思い出した。
当時の調査兵団で優秀だった兵士、ヒース班長は外の世界で命を落とし、そのヒースの妻が巨人信奉者に利用されてしまった。そして、彼らの暴動によってシガンシナに一体の巨人が入り込んだのだ。その巨人の嘔吐物の中で、犠牲となったヒース班長の妻の亡骸から一人の赤ん坊が這い出た。そのときの子供が彼だった。
現在、キュクロとシャルルはイノセンシオ家におきた事件の関係で憲兵団に追われていた。とりあえずは引渡しに応じるカルロ。
キュクロの周囲に集まる野次の中に、シャルルの姿を垣間見る。キュクロは再会の喜びも出来ずに押し黙り、わずかな視線と仕草で『来るな』と伝えた。彼女まで目立ってしまったら二人とも捕まってしまう。
「キュクロ。良心に恥じるところが無ければ問題ないだろう」
「だといいけどな」
キュクロはシャルルから借りた小刀を渡す。そして、自らの足で憲兵団のところへ歩を進めるのであった。
そのやり取りを見ていたシャルルにカルロの視線が一瞬向けられる。彼女はカルロに気づかれていた。あわてて目をそらす。キュクロが小刀をカルロに渡した理由を考える―――――。
夜、カルロは次々と出てくる“転属願い”の処理を行っていた。先ほどの壁外調査は隊員の心を折るには十分すぎたらしく、次々と駐屯兵団などへの転属希望者が相次ぐ。15年間のブランクはさすがといったところで、経験も人材も乏しいのが現状だ。それはカルロ本人とて例外ではないのかもしれない。挙句の果てには側近が「私も追加お願いします」と泣きながら転属をお願いされる始末だ。
「今までご苦労だった」
そして、カルロのもとに客人が訪れる。
「ようこそ。シャルル・イノセンシオさん」
「私の名前を・・・?」
大方、憲兵団の報告などでキュクロたちの状況は把握していた。彼女が来るだろうと思って、調査兵団の仲間たちには話をつけていた。カルロはお勧めのティーを彼女に差し出す。すぐに飲み干した。
「キュクロは今どうしていますか?」
「護送車で今頃シーナに向かっているだろうな」
キュクロは現在複数の嫌疑がかけられていた。イノセンシオ家の人間や巨人信奉者を殺したという容疑だ。シャルルは強く否定する。彼女を守っただけで何もしていない。だが目撃者の証言があった。兄のシャビィだった。
カルロは彼のこれまでの経緯や境遇を彼女の口から聞く。
「因縁だな・・・巨人の子として生きてきたとは・・・」
続く
所感・解説など
一難去ってまた一難。巨人から命を奪われずには済みましたが、今度の相手は国家権力です。ここから話がさらに進んでいきます。とても面白くなってくるところでもあるので楽しみですね。
そして、憲兵団の謎の新キャラクターで女兵士「グロリア・ベルンハルト」が登場。またまた嵐が訪れそうです。こちらのキャラクターは小説版には登場しなかった漫画オリジナルキャラクターです。キャラの立ち方が明らかに違うので、今後も何かしら関わってきそうですね。
シリウス次号はコミックス最新刊発売記念として、表紙&カラーを飾ります。
リヴァイ外伝 番外編の内容
地下街で胡坐をかくホームレスの老人に声をかける。
「なぁじいさん。何やってんだ?」
「・・・歌を歌っているんじゃ。運がよけりゃ食べ物を恵んでくれる」
恵んでもらったと思われる汚れたパンが壊れかけの皿に添えてある。地下街ではこれでもご馳走なのだろう。
「なぁ俺にも教えてくれよ」
「あぁ?」
満面の笑顔。こんな若い赤髪の娘のお願いを誰が断れようか。
「勝手にしろ」
―壁外調査、補給基地。
「―このようにこの陣形にも全く隙が無いわけじゃない―」
「(クソ・・・・腹減ったしフラゴン話なげぇよ・・・)」
イライラが募っているイザベル。リヴァイとファーランはそんな彼女の不穏な気配に気づいていた。
「おい・・・あいつまずいぞ」
「あぁ腹が減ったって顔だ」
次の瞬間、壁にひびが入る。
「アアアー」
謎の怪音波。あのフラゴンですら、白目をむきながら耳をふさぐ始末。サイラムも意識を保つので精一杯の様子だ。リヴァイとファーランもこの怪音波には無力となる。
「オイ!!早く食い物を用意しろ!!」
リヴァイの怒号が鳴り響いた。
「よぉじいさん。最近あの子見ねぇなあ。下手糞だったけど寂しいもんだな」
「・・・」
地下に差すわずかな光を背に老人は歌う。
終わり